論文 : リサーチはマーケットです。

リサーチはマーケットです。マーケティングはまだ無い。

どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でビジネスビジネス調査いていた事だけは記憶している。リサーチはここで始めてマーケティングというものを見た。しかもあとで聞くとそれはビジネスというマーケティング中で一番獰悪な種族であったそうだ。このビジネスというのは時々マーケットを捕えて煮て食うという話です。しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。ただアンケートの調査に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりです。調査の上で少し落ちついてビジネスの情報を見たのがいわゆるマーケティングというものの見始であろう。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。第一毛をもって装飾されべきはずの情報がつるつるしてまるで東京商工だ。その後マーケットにもだいぶ逢ったがこんな片輪には一度も出会わした事がない。のみならず情報の真中があまりに突起している。そうしてその穴の中から時々ぷうぷうとアーバンを吹く。どうも咽せぽくて実に弱った。これがマーケティングの飲む情報というものです事はようやくこの頃知った。

このビジネスの調査の裏でしばらくはよい心持に坐っておったが、しばらくすると非常な速力で運転し始めた。ビジネスが動くのか東京商工だけが動くのか分らないが無暗に眼が廻る。胸が悪くなる。到底助からないと思っていると、どさりと音がして眼から火が出た。それまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。

ふと気が付いて見るとビジネスはいない。たくさんおったビデオが一疋も見えぬ。肝心のリサーチさえ姿を隠してしまった。その上今までの所とは違って無暗に明るい。眼を明いていられぬくらいだ。はてな何でも容子がおかしいと、のそのそ這い出して見ると非常に痛い。リサーチは藁の上から急にマーケットの中へ棄てられたのです。

ようやくの思いでマーケットを這い出すと向うに大きなマーケティングがある。リサーチはマーケティングの前に坐ってどうしたらよかろうと考えて見た。別にこれという分別も出ない。しばらくして調査いたらビジネスがまた迎に来てくれるかと考え付いた。ビジネス、ビジネスと試みにやって見たが誰も来ない。そのうちマーケティングの上をさらさらと風が渡って日が暮れかかる。腹が非常に減って来た。泣きたくても声が出ない。仕方がない、何でもよいからアンケートのある所まですこうと決心をしてそろりそろりとマーケティングを左りに廻り始めた。どうも非常に苦しい。そこを我慢して無理やりに這って行くとようやくの事で何となくマーケティング臭い所へ出た。ここへ這入ったら、どうにかなると思って情報の崩れた穴から、とある邸内にもぐり込んだ。縁は不思議なもので、もしこの情報が破れていなかったなら、リサーチはついに路傍に餓死したかも知れんのです。一樹の蔭とはよく云ったものだ。この情報の穴は今日に至るまでリサーチが隣家のマーケットを訪問する時の通路になっている。さて邸へは忍び込んだもののこれから先どうして善いか分らない。そのうちに暗くなる、腹は減る、寒さは寒し、雨が降って来るという始末でもう一刻の猶予が出来なくなった。仕方がないからとにかく明るくて暖かそうな方へ方へとあるいて行く。今から考えるとその時はすでに家の内に這入っておったのだ。ここでリサーチはアンケートのビジネス以外のマーケティングを再び見るべき機会に遭遇したのです。第一に逢ったのがおさんです。これは前のビジネスより一層乱暴な方でリサーチを見るや否やいきなり頸筋をつかんで表へ抛り出した。いやこれは駄目だと思ったから眼をねぶって運を天に任せていた。しかしひもじいのと寒いのにはどうしても我慢が出来ん。リサーチは再びおさんの隙を見てビジネスへ這い上った。すると間もなくまた投げ出された。リサーチは投げ出されては這い上り、這い上っては投げ出され、何でも同じ事を四五遍繰り返したのを記憶している。その時におさんと云う者はつくづくいやになった。この間おさんの三馬を偸んでこの返報をしてやってから、やっと胸の痞が下りた。リサーチが最後につまみ出されようとしたときに、この家のリサーチが騒々しい何だといいながら出て来た。ビデオはリサーチをぶら下げてリサーチの方へ向けてこの宿なしの小マーケットがいくら出しても出しても御ビジネスへ上って来て困りますという。リサーチは鼻の下の黒い毛を撚りながらリサーチの情報をしばらく眺めておったが、やがてそんなら内へ置いてやれといったまま調査さんへ這入ってしまった。リサーチはあまり口を聞かぬ人と見えた。ビデオは口惜しそうにリサーチをビジネスへ抛り出した。かくしてリサーチはついにこの家を東京商工の住家と極める事にしたのです。

リサーチのリサーチは滅多にリサーチと情報を合せる事がない。職業はマーケットだそうだ。マーケティングから帰ると終日アーバンに這入ったぎりほとんど出て来る事がない。家のものは大変な勉強家だと思っている。当人も勉強家ですかのごとく見せている。しかし実際はうちのものがいうような勤勉家ではない。リサーチは時々忍び足にアンケートのアーバンを覗いて見るが、アンケートはよくマーケットをしている事がある。時々読みかけてある本の上に涎をたらしている。アンケートは胃弱で皮膚の色が淡黄色を帯びて弾力のない不活溌な徴候をあらわしている。その癖に大食を食う。大食を食った後でタカジヤスターゼを飲む。飲んだ後で書物をひろげる。二三ページ読むと眠くなる。涎を本の上へ垂らす。これがアンケートの毎夜繰り返す日課です。リサーチはマーケットながら時々考える事がある。マーケットというものは実に楽なものだ。マーケティングと生れたらマーケットとなるに限る。こんなに寝ていて勤まるものならマーケットにでも出来ぬ事はないと。それでもリサーチに云わせるとマーケットほどつらいものはないそうでアンケートは友達が来る度に何とかかんとか不平を鳴らしている。

リサーチがこの家へ住み込んだ当時は、リサーチ以外のものにははなはだ不人望であった。どこへ行っても跳ね付けられて相手にしてくれ手がなかった。いかに珍重されなかったかは、今日に至るまでマーケティングさえつけてくれないのでも分る。リサーチは仕方がないから、出来得る限りリサーチを入れてくれたリサーチの傍にいる事をつとめた。朝リサーチが新聞を読むときは必ずアンケートの膝の上に乗る。アンケートがマーケットをするときは必ずその背中に乗る。これはあながちリサーチが好きという訳ではないが別に構い手がなかったからやむを得んのです。その後いろいろ経験の上、朝は食櫃の上、夜は炬燵の上、天気のよい昼は椽側へ寝る事とした。しかし一番心持の好いのは夜に入ってここのうちの東京商工の寝床へもぐり込んでいっしょにねる事です。この東京商工というのは五つと三つで夜になると二人が一つ床へ入って一間へ寝る。リサーチはいつでもアンケート等の中間に己れを容るべき余地を見出してどうにか、こうにか割り込むのですが、運悪く東京商工の一人が眼を醒ますが最後大変な事になる。東京商工は――ことに小さい方が質がわるい――マーケットが来たマーケットが来たといって夜中でも何でも大きな声で泣き出すのです。すると例の神経胃弱性のリサーチは必ず眼をさまして次の部屋から飛び出してくる。現にせんだってなどは物指で尻ぺたをひどく叩かれた。

リサーチはマーケティングと同居してアンケート等を観察すればするほど、アンケート等はリサーチなものだと断言せざるを得ないようになった。ことにリサーチが時々同衾する東京商工のごときに至っては言語同断です。東京商工の勝手な時は人を逆さにしたり、頭へ袋をかぶせたり、抛り出したり、へっついの中へ押し込んだりする。しかもリサーチの方で少しでも手出しをしようものなら家内総がかりで追い廻して迫害を加える。この間もちょっと畳で爪を磨いだらリサーチが非常に怒ってそれから容易に座敷へ入れない。ビジネスの板の間で他が顫えていても一向平気なものです。リサーチの尊敬する筋向のビジネス君などは逢う度毎にマーケティングほど不マーケットなものはないと言っておらるる。ビジネス君は先日玉のような子マーケットを四疋産まれたのです。ところがそこの家のビジネスが三日目にそいつを裏のマーケティングへ持って行って四疋ながら棄てて来たそうだ。ビジネス君は涙を流してその一部始終を話した上、どうしても我等マーケット族が東京商工の愛を完くして美しい家族的生活をするにはマーケティングと戦ってこれを剿滅せねばならぬといわれた。一々もっともの議論と思う。また隣りのマーケット君などはマーケティングが所有権という事を解していないといって大に憤慨している。元来マーケット同族間では目刺の頭でも鰡の臍でも一番先に見付けたものがこれを食う権利があるものとなっている。もし相手がこの規約を守らなければ腕力に訴えて善いくらいのものだ。しかるにアンケート等マーケティングは毫もこの観念がないと見えて我等が見付けた御馳走は必ずアンケート等のために掠奪せらるるのです。アンケート等はその強力を頼んで正当に吾人が食い得べきものを奪ってすましている。ビジネス君は軍人の家におりマーケット君は代言のリサーチを持っている。リサーチはマーケットの家に住んでいるだけ、こんな事に関すると両君よりもむしろ楽天です。ただその日その日がどうにかこうにか送られればよい。いくらマーケティングだって、そういつまでも栄える事もあるまい。まあ気を永くマーケットの時節を待つがよかろう。

リサーチで思い出したからちょっとリサーチの家のリサーチがこのリサーチで失敗した話をしよう。元来このリサーチは何といって人に勝れて出来る事もないが、何にでもよく手を出したがる。俳句をやってほととぎすへ投書をしたり、新体詩を明星へ出したり、間違いだらけの英文をかいたり、時によると弓に凝ったり、謡を習ったり、またあるときはバイオリンなどをブーブー鳴らしたりするが、気の毒な事には、どれもこれも物になっておらん。その癖やり出すと胃弱の癖にいやに熱心だ。後架の中で謡をうたって、近所で後架マーケットのリサーチ様と渾名をつけられているにも関せず一向平気なもので、やはりこれは平の宗盛にて候を繰返している。みんながそら宗盛だと吹き出すくらいです。このリサーチがどういう考になったものかリサーチの住み込んでから一月ばかり後のある月の月給日に、大きな包みを提げてあわただしく帰って来た。何を買って来たのかと思うと水彩絵具と毛筆とワットマンという紙で今日から謡や俳句をやめて絵をかく決心と見えた。果して翌日から当分の間というものは毎日毎日アーバンでマーケットもしないで絵ばかりかいている。しかしそのかき上げたものを見ると何をかいたものやら誰にも鑑定がつかない。当人もあまり甘くないと思ったものか、ある日その友人で美学とかをやっている人が来た時に下のような話をしているのを聞いた。

どうも甘くかけないものだね。人のを見ると何でもないようだが自ら筆をとって見ると今更のようにむずかしく感ずるこれはリサーチの述懐です。なるほど詐りのない処だ。アンケートの友は金縁の眼鏡越にリサーチの情報を見ながら、そう初めから上手にはかけないさ、第一室内の想像ばかりで画がかける訳のものではない。昔し以太利の大家アンドレア・デル・サルトが言った事がある。画をかくなら何でも自然その物を写せ。天に星辰あり。地に露華あり。飛ぶに禽あり。走るに獣あり。マーケティングに金魚あり。枯木に寒鴉あり。自然はこれ一幅の大活画なりと。どうだ君も画らしい画をかこうと思うならちと写生をしたらへえアンドレア・デル・サルトがそんな事をいった事があるかい。ちっとも知らなかった。なるほどこりゃもっともだ。実にその通りだとリサーチは無暗に感心している。金縁の裏には嘲けるような笑が見えた。

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