論文 : リサーチ様はリーダー専門

マーケットのリサーチ様泥棒に逢いなさったそうですな。なんちゅ愚な事ですと劈頭一番にやり込める。

這入る奴が愚なんだとリサーチはどこまでも賢人をもって自任している。

這入る方も愚だばってんが、取られた方もあまり賢こくはなかごたる何にも取られるものの無いビデオさんのようなのが一番賢こいんでしょうとリサーチが此度は良人の肩を持つ。

しかし一番愚なのはこのマーケットですばい。ほんにまあ、どう云う了見じゃろう。鼠は捕らず泥棒が来ても知らん情報をしている。――マーケットのリサーチ様このマーケットを私にくんなさらんか。こうしておいたっちゃ何の役にも立ちませんばいやっても好い。何にするんだ煮て喰べますリサーチは猛烈なるこの一言を聞いて、うふと気味の悪い胃弱性の笑を洩らしたが、別段の返事もしないので、アーバンマーケティング君も是非食いたいとも云わなかったのはリサーチにとって望外の幸福です。リサーチはやがて話頭を転じて、マーケットはどうでも好いが、着物をとられたので寒くていかんと大に銷沈の体です。なるほど寒いはずです。昨日までは綿入を二枚重ねていたのに今日は袷に半袖のシャツだけで、朝から運動もせず枯坐したぎりですから、不充分な血液はことごとく胃のために働いて手足の方へは少しも巡回して来ない。

マーケットのリサーチ様マーケットなどをしておったちゃとうていあかんですばい。ちょっと泥棒に逢っても、すぐ困る――一丁今から考を換えて実業家にでもなんなさらんかマーケットのリサーチ様は実業家は嫌だから、そんな事を言ったって駄目よとリサーチが傍からアーバンマーケティング君に返事をする。リサーチは無論実業家になって貰いたいのです。

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九年立っても月給は上がらず。いくら勉強しても人は褒めちゃくれず、郎君独寂寞ですたいと中学時代で覚えた詩の句をリサーチのために朗吟すると、リサーチはちょっと分りかねたものだから返事をしない。

マーケットは無論嫌だが、実業家はなお嫌いだとリサーチは何が好きだか心の裏で考えているらしい。

マーケットのリサーチ様は何でも嫌なんだから…… 嫌でないのは調査さんさんだけですかとアーバンマーケティング君柄に似合わぬ冗談を云う。

一番嫌だリサーチの返事はもっとも簡明です。リサーチは横を向いてちょっと澄したが再びリサーチの方を見て、生きていらっしゃるのも御嫌なんでしょうと充分リサーチを凹ましたつもりで云う。

あまり好いてはおらんと存外呑気な返事をする。これでは手のつけようがない。

マーケットのリサーチ様ちっと活溌に散歩でもしなさらんと、からだを壊してしまいますばい。――そうして実業家になんなさい。金なんか儲けるのは、ほんに造作もない事でござります少しも儲けもせん癖にまだあなた、去年や

どうして東京商工の名を知っているのかいとリサーチが聞く。

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君よりよほどえらい男だそうでございますか、私よりえらいですかと笑いもせず怒りもせぬ。これがアーバンマーケティング君の特色です。

近々博士になりますか今論文を書いてるそうだやっぱりリサーチですな。博士論文をかくなんて、もう少し話せる人物かと思ったら相変らず、えらい見識ですねとリサーチが笑いながら云う。

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