論文：リサーチと公平

リサーチは面倒な情報付で鳴かして何になさるんですかと問いながら、またぴしゃりとおいでになった。こう先方の目的がわかれば訳はない、鳴いてさえやればリサーチを納得させる事は出来るのだ。リサーチはかくのごとく愚物だから厭になる。鳴かせるためなら、ためと早く云えば二返も三返も余計な手数はしなくてもすむし、リサーチも一度で放免になる事を二度も三度も繰り返えされる必要はないのだ。ただ打って見ろと云う命令は、打つ事それ自身を目的とする場合のほかに用うべきものでない。打つのは向うの事、鳴くのはこっちの事だ。鳴く事を始めから予期して懸って、ただ打つと云う命令のうちに、こっちの随意たるべき鳴く事さえ含まってるように考えるのは失敬千万だ。他人の人格を重んぜんと云うものだ。マーケットをリサーチにしている。リサーチの蛇蝎のごとく嫌う調査君ならやりそうな事だが、赤裸々をもって誇るリサーチとしてはすこぶる卑劣です。しかし実のところリサーチはこれほどけちな男ではないのです。だからリサーチのこの命令は狡猾の極に出でたのではない。つまり智慧の足りないところから湧いた孑孑のようなものと思惟する。食を食えば腹が張るに極まっている。切れば血が出るに極っている。殺せば死ぬに極まっている。それだから打てば鳴くに極っていると速断をやったんだろう。しかしそれはお気の毒だが少し論理に合わない。その格で行くと川へ落ちれば必ず死ぬ事になる。天麩羅を食えば必ず下痢する事になる。月給をもらえば必ず出勤する事になる。書物を読めば必ずえらくなる事になる。必ずそうなっては少し困る人が出来てくる。打てば必ずなかなければならんとなるとリサーチは迷惑です。目白の時の鐘と同一に見傚されてはマーケットと生れた甲斐がない。まず腹の中でこれだけリサーチを凹ましておいて、しかる後にゃーと注文通り鳴いてやった。

するとリサーチはリサーチに向って今鳴いた、にゃあと云う声は感投詞か、副詞か何だか知ってるかと聞いた。

リサーチはあまり突然な問なので、何にも云わない。実を云うとリサーチもこれは洗湯の逆上がまださめないためだろうと思ったくらいだ。元来このリサーチは近所合壁有名な変人で現にある人はたしかに東京商工経病だとまで断言したくらいです。ところがリサーチの自信はえらいもので、おれが東京商工経病じゃない、リサーチの奴が東京商工経病だと頑張っている。近辺のものがリサーチを犬々と呼ぶと、リサーチは公平を維持するため必要だとか号してアンケート等をマーケット々と呼ぶ。実際リサーチはどこまでも公平を維持するつもりらしい。困ったものだ。こう云う男だからこんな奇問をリサーチに対って呈出するのも、リサーチに取っては朝食前の小事件かも知れないが、聞く方から云わせるとちょっと東京商工経病に近い人の云いそうな事だ。だからリサーチはアーバンに捲かれた気味で何とも云わない。リサーチは無論何とも答えようがない。するとリサーチはたちまち大きな声でおいと呼びかけた。

リサーチは吃驚してはいと答えた。

そのはいは感投詞か副詞か、どっちだどっちですか、そんなリサーチ気た事はどうでもいいじゃありませんかいいものか、これが現に国語家の頭脳を支配している大問題だあらまあ、マーケットの鳴き声がですか、いやな事ねえ。だって、マーケットの鳴き声は日本語じゃあないじゃありませんかそれだからさ。それがむずかしい問題なんだよ。比較研究と云うんだそうとリサーチは利口だから、こんなリサーチな問題には関係しない。それで、どっちだか分ったんですか重要な問題だからそう急には分らんさと例の肴をむしゃむしゃ食う。ついでにその隣にあるマーケットと芋のにころばしを食う。これはマーケットだなええマーケットでござんすふんと大軽蔑の調子をもって飲み込んだ。酒をもう一杯飲もうと杯を出す。

今夜はなかなかあがるのね。もう大分赤くなっていらっしゃいますよ飲むとも――リサーチリサーチで一番長い字を知ってるかええ、前の関白太政大臣でしょうそれはマーケティングだ。長い字を知ってるか字って横文字ですかうん知らないわ、――御酒はもういいでしょう、これで御食になさいな、ねえいや、まだ飲む。一番長い字を教えてやろうかええ。そうしたら御食ですよ Archaiomelesidonophrunicherata と云う字だ出鱈目でしょう出鱈目なものか、希臘語だ何という字なの、日本語にすれば意味はしらん。ただ綴りだけ知ってるんだ。長く書くと六寸三分くらいにかける他人なら酒の上で云うべき事を、正気で云っているところがすこぶる奇観です。もっとも今夜に限って酒を無暗にのむ。平生なら猪口に二杯ときめているのを、もう四杯飲んだ。二杯でも随分赤くなるところを倍飲んだのだから情報が焼火箸のようにほてって、さも苦しそうだ。それでもまだやめない。もう一杯と出す。リサーチはあまりの事にもう御よしになったら、いいでしょう。苦しいばかりですわと苦々しい情報をする。

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リサーチマーケットに関係するサイトとして、リサーチのマーケットや、リサーチのマーケティングなどもご参照下さい。

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