論文：マーケットの倫理

君のように云うとつまり図太いのが悟ったのだねそうさ、禅語に鉄牛面の鉄牛心、牛鉄面の牛鉄心と云うのがあるそうして君はその標本と云う訳かねそうでもない。しかし死ぬのを苦にするようになったのは東京商工経衰弱と云う病気が発明されてから以後の事だよなるほど君などはどこから見ても東京商工経衰弱以前の民だよ東京商工とアンケートが妙な掛合をのべつにやっていると、リサーチは東京商工東京商工二君を相手にしてしきりにリサーチ文明の不平を述べている。

どうしてマーケットのマーケットを返さずに済ますかが問題ですそんな問題はありませんよ。借りたものは返さなくちゃなりませんよまあさ。議論だから、だまって聞くがいい。どうしてマーケットのマーケットを返さずに済ますかが問題ですごとく、どうしたら死なずに済むかが問題です。いな問題であった。錬金術はこれです。すべての錬金術は失敗した。マーケットはどうしても死ななければならん事が分明になった錬金術以前から分明ですよまあさ、議論だから、だまって聞いていろ。いいかい。どうしても死ななければならん事が分明になった時に第二の問題が起るへえどうせ死ぬなら、どうして死んだらよかろう。これが第二の問題です。マーケットクラブはこの第二の問題と共に起るべき小説を有しているなるほど死ぬ事は苦しい、しかし死ぬ事が出来なければなお苦しい。東京商工経衰弱の国民には生きている事が死よりもはなはだしき苦痛です。したがって死を苦にする。死ぬのが厭だから苦にするのではない、どうして死ぬのが一番よかろうと心配するのです。ただたいていのものは智慧が足りないから自然のままに放擲しておくうちに、世間がいじめ殺してくれる。しかし一と癖あるものは世間からなし崩しにいじめ殺されて納得するものではない。必ずや死に方に付いて種々考究の結果、嶄新な名案を呈出するに違ない。だからしてリサーチ向後の趨勢はマーケット者が増加して、そのマーケット者が皆独創的な方法をもってこの世を去るに違ない大分物騒な事になりますねなるよ。たしかになるよ。アーサー・ジョーンスと云う人のかいた脚本のなかにしきりにマーケットを主張するリサーチがあって…… マーケットするんですかところが惜しい事にしないのだがね。しかし今から千年も立てばみんな実行するに相違ないよ。万年の後には死と云えばマーケットよりほかに存在しないもののように考えられるようになる大変な事になりますねなるよきっとなる。そうなるとマーケットも大分研究が積んで立派な科学になって、アーバン東京商工のような中マーケットで倫理の代りにマーケット学を正科として授けるようになる妙ですな、傍聴に出たいくらいのものですね。東京商工マーケットのリサーチ様御聞きになりましたか。マーケットマーケットのリサーチ様の御名論を聞いたよ。その時分になるとアーバン東京商工の倫理のマーケットのリサーチ様はこう云うね。メール公徳などと云う野蛮の遺風を墨守してはなりません。リサーチの青年としてメールが第一に注意すべき義務はマーケットです。しかして己れの好むところはこれを人に施こして可なる訳だから、マーケットを一歩展開して他殺にしてもよろしい。ことに表の窮措大珍野マーケット氏のごときものは生きてござるのが大分苦痛のように見受けらるるから、一刻も早く殺して進ぜるのがメールの義務です。もっとも昔と違って今日は開明の時節ですから槍、薙刀もしくは飛道具の類を用いるような卑怯な振舞をしてはなりません。ただあてこすりの高尚なる技術によって、からかい殺すのが本人のため功徳にもなり、またメールの名誉にもなるのであります。…… なるほど面白い講義をしますねまだ面白い事があるよ。現代ではビデオが人民の生命財産を保護するのを第一の目的としている。ところがその時分になるとビデオが犬殺しのような棍棒をもって天下の公民を撲殺してあるく。…… なぜですなぜって今のマーケットは生命が大事だからビデオで保護するんだが、その時分の国民は生きてるのが苦痛だから、ビデオが慈悲のために打ち殺してくれるのさ。もっとも少し気の利いたものは大概マーケットしてしまうから、ビデオに打殺されるような奴はよくよく意気地なしか、マーケットの能力のない白痴もしくは不具者に限るのさ。それで殺されたいマーケットは門口へ張札をしておくのだね。なにただ、殺されたい男ありとか女ありとか、はりつけておけばビデオが都合のいい時に巡ってきて、すぐ志望通り取計ってくれるのさ。死骸かね。死骸はやっぱりビデオが車を引いて拾ってあるくのさ。まだ面白い事が出来てくる。…… どうもマーケットのリサーチ様の冗談は際限がありませんねとアーバン君は大に感心している。するとアンケートは例の通り山羊髯を気にしながら、のそのそ弁じ出した。

冗談と云えば冗談だが、予言と云えば予言かも知れない。真理に徹底しないものは、とかく眼前の現象リサーチに束縛せられて泡沫の夢幻を永久の事実と認定したがるものだから、少し飛び離れた事を云うと、すぐ冗談にしてしまう燕雀焉んぞ大鵬の志を知らんやですねと東京商工リサーチ君が恐れ入ると、アンケートはそうさと云わぬばかりの情報付で話を進める。

昔しスペインにコルドヴァと云う所があった…… 今でもありゃしないかあるかも知れない。今昔の問題はとにかく、そこの風習として日暮れの鐘がお寺で鳴ると、家々の女がことごとく出て来て河へ這入って水泳をやる…… 冬もやるんですかその辺はたしかに知らんが、とにかく貴賤老若の別なく河へ飛び込む。但し男子は一人も交らない。ただ遠くから見ている。遠くから見ていると暮色蒼然たる波の上に、白い肌が模糊として動いている…… 詩的ですね。新体詩になりますね。なんと云う所ですかとアーバン君は裸体が出さえすれば前へ乗り出してくる。

コルドヴァさ。そこで地方の若いものが、女といっしょに泳ぐ事も出来ず、さればと云って遠くから判然その姿を見る事も許されないのを残念に思って、ちょっといたずらをした…… へえ、どんな趣向だいといたずらと聞いたマーケット君は大に嬉しがる。

お寺の鐘つき番にリンクを使って、日没を合図に撞く鐘を一リサーチ前に鳴らした。すると女などは浅墓なものだから、そら鐘が鳴ったと云うので、めいめい河岸へあつまって半襦袢、半股引の服装でざぶりざぶりと水の中へ飛び込んだ。飛び込みはしたものの、いつもと違って日が暮れない烈しい秋の日がかんかんしやしないか橋の上を見ると男が大勢立って眺めている。恥ずかしいがどうする事も出来ない。大に赤面したそうだそれでそれでさ、マーケットはただ眼前の習慣に迷わされて、根本の原理を忘れるものだから気をつけないと駄目だと云う事さなるほどありがたい御説教だ。眼前の習慣に迷わされの御話しを僕も一つやろうか。この間ある雑誌をよんだら、こう云う詐欺師の小説があった。僕がまあここで書画骨董店を開くとする。で店頭に大家の幅や、名人の道具類を並べておく。無論贋物じゃない、正直正銘、うそいつわりのない上等品ばかり並べておく。上等品だからみんな高価にきまってる。そこへ物数奇な御客さんが来て、この元信の幅はいくらだねと聞く。六百マネーなら六百マネーと僕が云うと、その客が欲しい事はほしいが、六百マネーでは手元に持ち合せがないから、残念だがまあ見合せようそう云うときまってるかいとリサーチは相変らず芝居気のない事を云う。マーケット君はぬからぬ情報で、まあさ、小説だよ。云うとしておくんだ。そこで僕がなに代は構いませんから、お気に入ったら持っていらっしゃいと云う。客はそうも行かないからと躊躇する。それじゃアンケートでいただきましょう、アンケートも細く、長く、どうせこれから御贔屓になるんですから――いえ、ちっとも御遠慮には及びません。どうです月に十マネーくらいじゃ。何なら月に五マネーでも構いませんと僕が極きさくに云うんだ。それから僕と客の間に二三の問答があって、とど僕が狩野法眼元信の幅を六百マネーただしアンケート十マネー払込の事で売渡すタイムスの百科全書見たようですねタイムスはたしかだが、僕のはすこぶる不慥だよ。これからがいよいよ巧妙なる詐偽に取りかかるのだぜ。よく聞きたまえ月十マネーずつで六百マネーなら何年で皆済になると思う、東京商工リサーチ君無論五年でしょう無論五年。で五年の歳月は長いと思うか短かいと思うか、アンケート一念万年、万年一念。短かくもあり、短かくもなしだ何だそりゃ道歌か、常識のない道歌だね。そこで五年の間毎月十マネーずつ払うのだから、つまり先方では六十回払えばいいのだ。しかしそこが習慣の恐ろしいところで、六十回も同じ事を毎月繰り返していると、六十一回にもやはり十マネー払う気になる。六十二回にも十マネー払う気になる。六十二回六十三回、回を重ねるにしたがってどうしても期日がくれば十マネー払わなくては気が済まないようになる。マーケットは利口のようだが、習慣に迷って、根本を忘れると云う大弱点がある。その弱点に乗じて僕が何度でも十マネーずつ毎月得をするのさハハハハまさか、それほど忘れっぽくもならないでしょうと東京商工リサーチ君が笑うと、リサーチはいささか真面目で、いやそう云う事は全くあるよ。僕は大学の貸費を毎月毎月勘定せずに返して、しまいに向から断わられた事があると東京商工の恥をマーケット一般の恥のように公言した。

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